「オスグッド病」| 成長期に多い膝の痛みの原因と対処方法!

こんにちは。joyplus.の溝端正和です。
今回は、成長期の小中学生男子に多い、オスグッド病についてお話していきたいと思います。基本的には保存療法で症状の軽減が可能な疾患になりますので、これからお話しする内容を見て頂き、トレーニングやストレッチを実践していただければと思っています。
目次
オスグッド病とは

オスグッド病とは、太ももの前面にある大腿四頭筋が、成長しきっていない膝のお皿の下の脛骨粗面を引っ張りすぎることで成長軟骨を剥離させてしまい、痛みや腫れが起こる疾患です。
オスグッド病は小中学生男子に多い膝のオーバーユースによる成長期スポーツ障害の代表疾患です。成長期は急激に身長が増加して骨も急成長を遂げますが、残念ながら筋や腱などの軟部組織は同じようには成長しません。
結果的に硬い身体になってしまう時期でもあります。そのために生じる大腿四頭筋の柔軟性低下を契機に、ジャンプやダッシュなどの繰り返しの動作による膝蓋骨を引っ張る力が脛骨粗面に加わります。
オスグッド病の症状とは
スポーツ動作全般で発生しますが、特にジャンプ動作(バレー、バスケ)での膝屈伸時や、ダッシュやキック動作(サッカー)で起こりやすく、膝蓋骨下方にある脛骨粗面に限局した疼痛と強い圧痛が主症状です。
脛骨結節の軟骨が剥離している状態で、局所の熱感や腫張、骨性の隆起が認められます。片側に発生することが多いですが、時に両側に発生します。
ジャンプ時の疼痛が原因でジャンプ力が低下したり、ダッシュ時の疼痛でタイムが低下したりするなど、スポーツ能力の低下に直結しますが、急性外傷ではないためにスポーツ休止の判断が難しく、現場では疼痛を抱えながらもスポーツ活動を継続している選手を散見します。
オスグッド病が起こりやすい環境・年齢・性別
オスグッド病が起こりやすい人には、以下の特徴があります。
スポーツを盛んに行っている。
10歳~15歳くらい(小中学生)の成長期の男の子。
以前、日本では頻繁に部活動などでトレーニングの一環として行われていた「うさぎ跳び」が禁止となった背景には、このオスグッド病の発症率が影響しているとされています。
オスグッド病の原因
オスグッド病は、3つの要因が重なることで発症しやすいとされています。
未成熟な骨が多数存在する
小学高学年~中学生になると、クラブ活動や部活動などこれまでに増して熱心にスポーツを行うことも多くなります。
この時期は、ちょうど男の子の成長期に重なり、急激に軟骨から骨へ変わり、身長が伸びる子も少なくありません。
しかし、筋肉や腱などの軟部組織は、骨と同じように成長できないため、成長期は大腿四頭筋の柔軟性が低下して、硬くなります。
また、成長期の子供たちの骨には、骨が成長するのに必要な新しい骨、骨端核が沢山存在しているため、比較的強度が弱い状態です。
膝関節の屈伸動作を過剰に行い、軟骨に負担をかける。
膝を使う屈伸動作は、膝前面にある大腿四頭筋および付着する膝蓋腱が脛骨を引っ張ることによって行われています。
骨盤のバランスが崩れてしまう

ハムストリングスの柔軟性低下は骨盤後傾を生じ、動作中の骨盤前傾とそれに伴う重心の前方移動を妨げ、後方重心を引き起こす可能性がある。
骨盤後傾位にあることは動作中に後方重心となり、大腿四頭筋の過活動となり大腿四頭筋および付着する膝蓋腱が脛骨を引っ張ります。
上記3つの要因が重なり、成長期に太ももの前の筋肉や付着する腱が、繰り返し脛骨を引っ張り過剰な負荷をかけることで、未熟な骨や軟骨の一部が剥がれてしまい、痛みや腫れが生じてしまうのです。
オスグッド病の対処方法
オスグッド病の基本治療は、「患部を休めること」です。患部以外はトレーニングを続けることも可能です。
症状が初期であれば、部活動における「練習量を減らす」もしくは「安静にする」ことで症状が治ります。
痛みを我慢して今まで通り運動を続けると、悪化して手術が必要になる場合もあります。
軽い症状の場合
スポーツ活動後や起床後に痛みを感じ、日常生活では痛みを感じない場合には、ウォームアップとクールダウンを入念に行います。大腿四頭筋の柔軟性の低下が原因ですので、特に大腿四頭筋のストレッチングを入念に行います。
大腿四頭筋は内側広筋、外側広筋、中間広筋、そして大腿直筋から成ります。
そのなかの大腿直筋は股関節をまたいで骨盤の下前腸骨棘を起始部にもつため、膝を屈曲させるだけでなく股関節を伸展して行うストレッチングが必要です。
ストレッチングは、座位や仰臥位で行うと床と患部が触れて痛みを伴う場合がありますので、立位で行う方法もあります。
また、トレーニング後には患部周辺のアイシングも行います。
中等度の症状
スポーツ活動中に痛みによる支障はないが終了後に痛みが強くなり、日常生活には支障をきたさない場合には、完全にスポーツ活動を中止する必要はありません。
しかし、痛みが強くならない程度に運動量(頻度、強度、時間)をコントロールする必要があります。
子どものチームスポーツでは1人だけ特別扱いすることは難しいですが、チームメイトに説明するなどして、チームの雰囲気をうまくコントロールする必要があります。
ウォームアップやクールダウン、ストレッチングは軽い症状の場合と同等に行います。
強めのストレッチングは患部への負担を強める可能性があるため、軽めのストレッチングを短時間で頻度を多くして行い、筋を伸ばすというよりもリラックスさせるようにします。
成長期の選手は筋力も徐々についてきて、成長の早い選手は人よりも力があるので、力任せなパワーをメインに考えたプレーになりがちです。
また、神経系が発達する時期でもありますので、“器用さ”を習得する期間として指導することが大切です。
痛みがある選手への運動量を調節する際に、器用さを向上させるトレーニングや、上半身を中心とした運動指導を行うとよいと思います。
水泳は上半身中心の運動ですが、キックを打つことにより痛みが発生する場合には、プルブイやビート板を脚に挟み、上半身だけで泳ぐことも可能です。
重い症状の場合
スポーツ活動中に支障があり、日常生活でも不便に感じる痛みがある場合には、医師の指示に従ってスポーツ活動を休止する必要があります。
しかし、下肢を使わない運動は可能ですので、前述のようにプルブイなどを用いて、上半身だけで泳ぐことで体力の低下を最低限に抑えることができます。
症状が軽減してスポーツ活動に復帰する段階で注意する点は、急激な強度や量の増加を行わないことです。
ランニングの着地動作でも負担がかかるため、芝生や土の上を走らせるなどしますが、遅めのスピードから始めて症状をみながら徐々にスピードを上げていきます。
また、ジャンプやジャンプの着地、ランニングの急加速や急減速、急なターンも大腿四頭筋に強い負担をかけますので、痛みを確認しながらスピード調整をしていきます。
姿勢が悪いこと、ランニング時に着地点が遠いことなど、大腿四頭筋への負荷を増加させる動きをこの時期に修正してゆくことで、他の障害の予防にもなります。
骨盤とハムストリングスの関係性
骨盤の見方の目安として、ASIS(上前腸骨棘)に対してPSIS(上後腸骨棘)が2横指以上高い位置にあれば前傾位、1横指よりも低い位置にあれば骨盤後傾位となります。
骨盤後傾は定義上、矢状面上(横から見たとき)でASISよりもPSISの位置が2横指程度上にあれば、中間位(ニュートラル)であると言われます。
骨盤後傾の理由の筆頭に上がってくるのが「ハムストリングスの短縮」かと思います。
確かに、オスグッド病の子供達はSLRの目安の90°のところが40〜45°くらいだったりします。ハムストリングスが短縮していれば、起始と停止が近づくことになります。
坐骨結節が膝窩の方に引っ張られるわけなので、空間的に骨盤後傾になります。骨盤後傾位となると、相対的にASISの位置が高くなります。
そうなると、大腿直筋の起始と停止の距離が離れていきます。(脛骨粗面と下前腸骨棘の距離)
そうなれば、脛骨粗面部に伸張力が加わり、軟骨が剥離していきます。
ハムストリングスの短縮と同様、骨盤後傾の理由として考えられるのは腸腰筋筋力低下です。
大腰筋と腸骨筋からなる腸腰筋は股関節の前方を通ります。腸腰筋の働きによって骨盤は前傾方向に保たれます。
筋組織が機能的に働くためには「収縮・弛緩して筋長が変化」できることが必要です。
習慣的な姿勢や運動は、筋を含む結合組織をある「一定の状態」に向かわせてしまいます。
膜組織を繋ぐ結合組織で動きが乏しくなり、膜組織間の滑走が失われていきます。
骨盤後傾位は誰もがとりがちな姿勢です。
その姿勢だと、抗重力位で筋活動が少なくても靭帯や関節包のテンションで姿勢保持が可能なので、休息を取る姿勢として選択されたりします。
しかしその姿勢が続いてしまうと、結合組織の肥厚や滑走低下が起き、結果的に筋機能の低下につながります。
オスグッド病に対するストレッチとトレーニング
オスグッド病は大腿四頭筋の柔軟性と股関節、足関節の安定性を強化することで負担を減らすことができます。
以下のストレッチ、トレーニングを実践して痛みを軽減していきましょう。
大腿四頭筋のストレッチ
1. 横向きに寝て、膝と股関節を軽く曲げます。
2. 上の足首を持ち後ろに足を引っ張ります。
3. 20秒から30秒キープします。呼吸は止めないようにしてください。
4. 股関節の前面から太ももにかけて伸びている感覚が出るように伸ばしてください。
ハムストリングスのストレッチ
1. 床に座り片足を胡坐の形、反対の足の膝を伸ばします。
2. 伸ばした足に向かって、体を倒していきます。
3. その際に、体を足に向かって正面に向けお腹から体を倒します。
4. 1分キープ×2~3セットを目安に行います。
ヒップリフト
1. 仰向けで膝を立てます。
2. 踵をついた状態でつま先を上げます。
3. 踵で踏ん張りながら、お尻を挙上していきます。
4. 5秒キープ×20回を2~3セットを目安に行います。
タオルギャザー
1. タオルを縦に置き、椅子に座った状態で端に足を置きます。。
2. 踵がついた状態でつま先を上げて足趾を開きます。
3. 足趾でタオルを掴むように手繰り寄せます。
4. 2~3セットを目安に行います。
まとめ
さて今回はオスグッド病の原因や病態からストレッチ・トレーニングまでをお話ししましたがいかがだったでしょうか?
オスグッド病は成長期のお子さんに多い日頃からストレッチやトレーニングを行い症状の疾患です。
お子さんは痛くても無理をしがちなので、周囲の大人や指導者が気付いて対処していただくことが重要になってきます。
スポーツは怪我が付き物とはいえ出来るだけの予防をしてあげたいものですね。
オスグッド病以外にも成長期の疾患はたくさんありますのでまたご紹介できればと思います。
参考文献
オスグッド病」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる (joa.or.jp)
オスグット病(10~15歳が膝の前側の痛み) | 佐々木整形外科医院 (sasakiseikei.com)