子供がボールを投げると肘が痛い|将来、影響が出る野球肘の恐ろしさ

こんにちは。
joyplus.鍼灸整骨院の山内です。
今回は「野球肘」について詳しくお話ししてきます。
「子供が投球をした時に肘に痛みあると言っている」
「練習後から肘の内側に痛みが出てくる」
「肘に痛みがあるが練習がなかなか休めない」
子供がこんな事を言ってきたら気をつけた方が良い!
野球肘は比較的よく聞く言葉ではありますが、実はすごく怖い病態でもあり放っておくと手術や今後の野球人生に大きく影響が出る可能性もあります。
今回は野球肘の怖さと早期発見・予防する方法をご紹介していきたいと思います。
野球肘が起こる箇所と原因について

野球をしているとよく聞く言葉だと思いますが『投球動作の繰り返しによって肘関節に起こる障害』の総称です。
野球肘の障害は『肘の外側、内側、後側の3つの部位別に大きく分けられ』年齢によって損傷される部位が異なるという特徴があり、投げ過ぎや不良な投球動作によって肘にかかる負荷が大きくなり痛みが発生します。
これから成長期の野球肘に多い内側・外側部分について説明と原因についてお話ししていきます。
肘の内側の痛みについて
上腕骨内側上顆障害(じょうわんこつないそくじょうかしょうがい:リトルリーガーズエルボー)と言われ、成長期の子供の肘関節内側(骨の出っぱり部分)は骨端線(こったんせん:骨になる軟骨)があるが通常の骨よりも未熟です。
姿勢不良や投げすぎにより肘の内側に外反と言われるストレスがかかり続ける事により、靭帯や筋肉の付着部である骨または軟骨部分が牽引される事により炎症や軟骨部分の障害が出る事で痛みが出現します。

当院での実際のエコー画像(左患側・右健側)
初期症状では投球後や練習後に肘の内側部(骨の出っぱり部分)に痛みが出現しますが数時間でおさまります。
そのうち症状が悪化すれば痛みが治りにくくなり打撃時や日常生活でも痛みが出現することもあります。
少年野球選手の20%に見られるという報告もあります。
肘の外側の痛みについて

離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん:別名 上腕骨小頭障害)
野球肘で最も重症になる障害のひとつです。
関節軟骨の一部が損傷したり、ひどくなると関節軟骨の一部が剥がれ関節ネズミとなったり、肘が変形して動きが悪くなったりします。
※関節ネズミとは骨や軟骨のカケラが関節の中に見られる病態です。
10歳前後に発生することが多いのですが初期は自覚症状が少ないことが特徴で、症状が悪化してから気づくことが多く肘に痛みが出たり肘の曲げ伸ばしが正常に行えなくなったりします。
初期で発見された場合は投球禁止が原則であり、自覚症状が出てからはほとんどの場合が手術となることが多いです。
なかなか初期で見つけることが難しくほとんど場合は痛くなってからの受診や野球検診と言われるフィジカルチェックや肘のエコー検査で発見されています。
野球肘の原因とは
学童期と中学生・高校生とは原因は異なります。
〈学童期の場合〉
①姿勢不良
成長に伴い姿勢が変化するが正常な姿勢を維持することが困難になり投球時に肩、肘へ負担がかかるとされています。
②柔軟性不足
成長に伴うもの、投球に伴うもの、生活習慣に伴うものと3つに分けることができます。
・成長に伴って急激に身長が伸び筋肉の柔軟性が追いつかなくなる場合
・投球や練習に伴い前腕や肩関節の柔軟性が低下する場合
・スマートフォンなどの普及によりねこ背が原因の場合
〈中学・高校生の場合〉
投球動作に必要な可動域や筋力が低下していると適切なフォームで投球することができずに肩や肘に負担がかかるとされています。
①可動域の改善
肩関節や肘関節など投球動作に必要な可動域を確保することが大切です。
②筋力の発揮
肩甲骨周りや太もも周り体幹など投球時に支えることができることが大切です。
野球肘に見られる危険なサイン

野球肘は病院や接骨院へ受診した時には悪化し、投球の中止をせざるを得ないお子さんが圧倒的に多く見られます。
そのため、投球や練習の中止をさせないためにも早期発見や早期受診が必要となり日常的にセルフチェックなどで気づくことが大切です。
ここからは『こんな時に痛みが伴った場合や、こんな事ができなくなった場合は早期に病院・接骨院に受診しよう!』という内容をお話ししていきます。
投球時や打撃時に痛みが伴う

投球時と打撃時に痛みが伴う場合は注意する必要があります。
投球時の肘の痛みに関しては想像つくと思いますが、投球時肘に外反ストレスが加わり筋肉や靭帯・骨同士の衝突により損傷が起き痛みが出現します。
打撃時に肘が痛むの?と思われるかもしれません。
しかしデータによると骨や軟骨損傷がある選手の中で7割は痛みを感じていないが約2割の選手は痛みを感じていたという報告があります。
報告からあるように打撃時に痛みを感じる場合は内側部の損傷をしている可能性があると捉えることもできるので、打撃時に痛みが伴う場合は早期に受診される事をお勧めします。
肘が曲がらない・伸びない

『左右で比べた時に肘が曲がりにくくなった。』
『左右で比べた時に肘が伸びにくくなった。』
『肘を曲げると痛みが出る』
『肘を伸ばすと痛みが出る』
実際にこんな症状を訴える選手は多く、僕自身も野球をしていましたが肘が伸びにくくなってから肘の内側の野球肘になりました。
野球人生は引退しましたが現在も肘の内側部分は変形し肘が伸びきらない制限が残ってしまいました。
そのせいか、時々肘が痛むことや違和感が出てくることもあります。
【なぜ、肘が曲がらない・伸びないといけないのか?】
そもそも正常に動かない関節には異常があるということであり、投球時などで負担がかかっていることが症状として現れているということです。
特に上腕骨小頭障害の場合は自覚症状がなく悪化しているケースが多いため肘関節の制限がある場合は気をつけなければなりません。
肘が曲がらない・伸びない選手はもうすでに何らかの問題が発生しているので、投球強度を落とすか、必要に応じて投球を禁止にしましょう。
実は野球肘になりやすいかわかる予測システムがある?
どうしてもセルフチェックでは早期発見・予防では限界があり、痛みが生じてから来院されることがほとんどです。
しかし近年では学童野球の中で全国的に野球検診が実施され始めています。
早期より発見することで子供たちの将来を守るためにフィジカルチェック・超音波エコー検査などを行っており、超音波エコーは体に害もなく簡易で早期に発見できるためすごく重宝されています。
個人的に簡易的でおすすめなのが『投球障害・予測システム』です。
こちらはあらゆる年代の選手たちのフィジカルチェックを基に構築された予防と障害予防の意識ができるように開発されたものであり、障害のリスクをあらわしてくれるので定期的に行うことが良いと思います。
日々のセルフケアが野球肘リスクを軽減させることができる

ここまでの内容いかがだったでしょうか?
野球肘は気づかないうちに進行しているのがわかってもらえたのではないでしょうか?
野球肘の原因のところでもお伝えしたように柔軟性や可動域を改善することで予防することができます。
ここからは野球肘予防の為に関係してくる関節や筋肉のストレッチやトレーニングを紹介していきます。
膝を伸ばしたまま、足が上がりますか?
・太もものウラ柔軟性チェック
太もものウラの硬さをみる代表的な柔軟の指標であるこのテスト。
意外と肩や肘の障害との関連は低いのですが、足やひざ、腰の障害との関連は強い項目です。
ある調査では、『70度以下の選手」が腰痛を起こす確率は2.5倍』というデータもあります。

上向きで寝た状態で片足だけ膝を伸ばしたまま上げます。太ももの中心の角度が70度以上であればokです。
左右差がないかもチェックしましょう!
太ももウラのストレッチ方法
また、練習後に自宅でストレッチをしているかが障害の発生と関わっていたとの報告があります。
もちろん、ストレッチをしている選手の方が障害の発生は少ない傾向にありました。
練習中のストレッチだけではなく、しっかり練習後もストレッチを行いましょう!
やっておきたい体幹柔軟性トレーニング
・背中の筋肉の柔軟性チェック
両肘を付けたまま、肘を高くあげていきます。肘の高さが鼻を越せば大丈夫です。
肘が鼻を越えない人は、体幹が硬く肘に負担がかかってしまうと言われています。
肘が鼻まで上がらない選手は1年間に故障する確率が60%というデータもあります。
・体幹柔軟性トレーニング
投げる動作は胸を張る、体を側屈する動作の複合です。
肘が鼻を越えない人は、体幹の側屈ストレッチや胸を張る練習を行いましょう。
①側屈ストレッチ
②胸張りストレッチ
しゃがみ込みができないと痛めやすい!?

少年野球投手を対象に行った調査で、しゃがみ込みができない選手は8割近い確率で投げるときに肩や肘を痛めていたことが分かりました。
・ふくらはぎの柔軟性チェック
早速ですがしゃがみ込みができるか自宅で出来るのでチェックしてみましょう!
かかとを浮かさずにしっかりしゃがみ込めれば合格です。
①難易度低
②難易度中
③難易度高
いかがでしたか?
難易度高の手を後ろに組んでしゃがめる人は、下半身のケガが少ないというデータもあります!
・ふくらはぎのストレッチとトレーニング方法
①足首可動域改善トレーニング
②ふくらはぎストレッチ
ご自宅でできるストレッチ・トレーニングを日頃から行いしっかりとしゃがみ込みができるようになりましょう!
野球肘は予防できる?
野球肘は姿勢不良や柔軟性が低下した状態で練習を続けることにより肘や肩へ負担がかかり痛めるとされています。
ただ姿勢や柔軟性のストレッチやトレーニングを日頃から行うことで予防することもできますが、お子さんの野球人生の為にも普段から
『投球障害・予防システム』や野球検診・整骨院での超音波エコーチェックをマメに行い早期で見つけることが大切なので是非ご活用ください!
日頃からの練習前・練習後のストレッチも忘れないようにしてください!
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