「治らない」と言われた腰痛症の方へ|改善のヒントに
先生、過去に何度もぎっくり腰をやっています。
先生、僕が20歳の頃、入浴後タオルで身体を拭こうと屈んだ時ぎっくり腰になったことが最初のぎっくり腰。
先生、身体を鍛えようとジョギングやトレーニングをした後、帰宅し玄関で靴を脱いでいる最中ぎっくり腰になりました。
私が担当している患者さんで腰痛症の方は非常に多いです。
頸部から肩背部の痛みや膝痛の方も臨床の現場ではよくみられますが、腰痛症の方が圧倒的に多いのが現状です。
ある調査では腰痛症の患者さんは全国に約2800万人から3000万人いると報告されています。
国民病の一つといわれる腰痛症も幾つかに分類することができます。少し専門的になりますが……
従来の分類では何かしらの器質的な問題があるもの(椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離すべり症など)と原因がよくわからないものとに分類されていました。
しかも、85%は原因が不明なものや、整形外科で画像診断を受けても「異常なし」と診断された患者さんたちです。
我々柔道整復師はこういった患者さんをよく診させていただいています。
中には「こんなに痛いのに、病院では異常なしと言われてショックです」と訴える患者さんも過去に何人かいました。
私は30年間接骨院業務に従事してきたjoypuls.鍼灸整骨院の筋肉爺さん(通称きん爺)こと堤です。
別にマッチョマンでもなんでもなく、筋肉をこよなく愛し、日々、共に勤務する若いセラピストたちと切磋琢磨しながら「正統派」を目指す中年セラピストです。
今回は初めてブログを書かせてもらっていますが、偶然でもこのブログを読んで下さる方々に少しでも有益な情報や、世の中に蔓延する間違った情報に対して、EBM(科学的根拠に基づいた医療)を重視した情報を大切にしつつ、独自の見解もお届けできたらと愚考しています。
この記事の結論はこうです。
皆さんが「腰痛症」の正体を知り、自ら自身の身体を知り、どこにいっても治らなかった腰痛症の正体を理解した上で、自分なりの「腰痛症対策」のヒントを与えることができるよう、最善を尽くします。どうか、最後までお付き合いください!
それでは参りましょう。
腰痛診療ガイドラインからみる色々な腰痛症
腰痛症は、ぎっくり腰と呼ばれている急性腰痛症や慢性腰痛症、さらには加齢などによって腰椎や周囲組織が変形する変形性腰椎症、感染によるものや腫瘍性疾患、骨折などがあり多岐にわたります。
最近改訂された腰痛診療ガイドラインからどんな種類の腰痛症があるのか、細かくみてみましょう。
ぎっくり腰以外の腰痛症ってあるんですね!
腰痛症の種類
以前は「85%が非特異的腰痛(原因のわからない腰痛)と言われましたが・・・」
欧米の論文をもとに85%が非特異的腰痛といわれていたのが、近年、その内訳として報告されたのは、
・椎間関節性…22%
・筋筋膜性…18%
・椎間板性…13%
・狭窄症…11%
・椎間板ヘルニア…7%
・仙腸関節性6%
と、75%以上で診断が可能。
診断不能の非特異的腰痛は22%でしかありませんでした。
つまりは、原因不明が85%から22%に改めて報告されました。
どこに行っても治らないと言われた腰痛症の患者さんは、まず適切な検査が可能な施設・病院において一度診察されることを私はオススメ致します。
個人的には患者さんが少しでもよくなるために、自身で診ることができないと判断したなら近隣の医療機関にご紹介させていただきます。
それが患者さんのためであり、地域医療の本来あるべき姿だと考えています。 まずは患者さんが安心して腰痛症と向き合えることが何よりも大切なことだとも思います。
腰痛症の経過
急性腰痛症と慢性腰痛症はどちらが自然によくなると思いますか?
そうです。急性腰痛症の方が自然と軽快することが多く経過は概ね良好です。
経験があるかと思いますが、実は慢性腰痛症の方が急性腰痛症に比べて自然と治りにくいそうです。
後は、心理社会的要因は腰痛を遷延化(長期化)させるようです。
反対に身体的・精神的に健康な生活習慣は、腰痛症の予後に良いという報告もあります。
例えば、日本人を対象とした研究では、勤労者の慢性腰痛症への移行にかかわる危険因子として重量物取り扱いに従事していることや、働きがいが低いこと、身体愁訴が多いことなどが報告されています。
腰痛症と生活習慣
では腰痛症と生活習慣について質問します。普段、予防のために何か気を付けていることはありますでしょうか?
太らないように食事面やできるだけ身体を動かすことを意識しています……
以前に身体を鍛えようとジョギングやトレーニングをした後、帰宅し玄関で靴を脱いでいる最中ぎっくり腰になったことがトラウマになっております。
体重過多と肥満は腰痛症の危険因子と報告があります。
標準体重の維持が予防に関連すると言われ、飲酒や喫煙なども少なからず発症のリスクや有病率との関連も指摘されています。
また急激な激しい運動は逆効果ですが、日常的に運動をされている方と運動をしていない方を比べると、運動していない方がより腰痛症を発症しやすいようですね。
自分の体力や年齢にみあった適度な運動が好ましいと思います。
腰痛症の患者さんが気を付けるべき生活習慣
どこに行っても治らないと言われた腰痛症の方に、私が言えること。
それは自分の腰痛症がどのような種類のものに分類されるのかキチンと病態を把握、認識できているかどうか、医療機関にかかって治療や施術を受けても痛みは全く変わることがないのかどうか、慢性腰痛症でお悩みの方によくある長時間痛みが続くのかどうかなど、四六時中自分の身体に苦しめられているか、どうかです。
きん爺から患者さんへの進言①
1つ目の私からの進言は、我々医療従事者が腰痛症の患者さんを初診で来院された時に、
見逃してはいけないサイン(redflags)があり、腫瘍・感染・骨折などの重篤なもの、神経症状(足のしびれ・脱力など)、安静時痛や胸部痛があるか、発熱があるかなどです。
特に神経症状を伴うものと伴わないものの鑑別は大事だと思います。
これらのサインがあるものは早期に近隣の病院をご紹介しています。
注意しなければいけないのは・・・
■発熱している
■転落した
■激痛
■繰り返す腰痛
■長く続く腰痛
■いつもと違う腰痛
■膝がガクガクする
■スリッパが脱げやすい
■足のしびれ
■排尿・排便障害
我々が初診でよく目にする神経症状を伴う疾患とは
①腰椎椎間板ヘルニア
②脊柱管狭窄症
です。
腰椎椎間板ヘルニアは
背骨と背骨の間にある椎間板というクッション材の役割をしている部分が、トラブルを起こし
神経を圧迫してしまいます。
座る時間が長い方は、腰椎椎間板ヘルニアになりやすいと言われています。
②脊柱管狭窄症
背骨と背骨の空間が狭くなり、血管や神経を圧迫し、しびれや痛みを起こします。
50代以降の方に多く、老化症状と言えます。
これって整骨院で治療して改善しますでしょうか?
これらは、我々整骨院での通院は難しく、患者さんのことを考えると先ずは病院での細やかな問診、診察、有用な画像検査(x線検査やMRI)をオススメしています。
疾患名が判明すれば次の工程としては
①薬物療法
②リハビリテーション(身体機能の改善)
③外科的療法(手術)
大きく分けてこの3点のどれかを受けることになります。」
きん爺から患者さんへの進言②
2つ目の進言は、どこにいっても治らないと言われた腰痛症の患者さんにご紹介したいのは、認知行動療法プログラムという概念です。
「聞きなれないと思いますが、最初にご説明した通り健康的な生活習慣と穏やかでストレスが少ない生活が推奨されている、ということだと思います
認知行動療法のひとつであるマインドフルネス・ストレス低減方法など最近では禅や瞑想などと紐付けて話題になっています。
どこで診てもらっても治らないと言われたのに、果たして本当にそんなことでよくなりますか??
病院をはじめ他の医療機関を受診されても、なかなか思うような成果が得られない患者さんが多数いると思います。
そのような方に、お伝えしたいことがあります。
この十数年、私たちのしらないうちに腰痛症の治療の常識は大きく変わりました。
①痛みの原因とメカニズムを正しく理解すること
②適度に身体を動かすこと。
ガイドラインにもあるように、腰痛症は腰椎から脳にいたるあらゆる部位で様々な病態が関与していると言われています。
今まで聞いたこともないようなことに、チャレンジすることも一つの選択肢ではないでしょうか?
腰痛症の患者さんが自宅でできるセルフケア
それでは、自宅でできる一般的な慢性腰痛症に対するエクササイズの一つをご紹介します。
人間の身体にはコルセットの役割をしているインナーユニットという働きがあります。腹腔を取り囲む、腹横筋・横隔膜・骨盤底筋・多裂筋の4筋があります。
まずは、ドローインというエクササイズを覚えましょう。
※こちらの動画を参照してください。
特に腹横筋のトレーニングという概念です。
個々の機能のほか、腹腔内圧の維持・上昇を行いますが、腹横筋などが収縮して、腹腔内圧を上昇しようとしても、骨盤底筋が底面で支持しきれなければその機構はうまく働かないのです。
ドローイングをマスターしたらつぎの工程として
①四つん這いでの上下肢挙上運動
②両脚でのブリッジ
③片脚でのブリッジ
をオススメします。もちろんのことですが、痛みが伴うときは中止してください。時間や回数も正しくできる範囲で結構です。
腰痛症改善のための体幹トレーニング
先生、他に何かエクササイズをご存じですか?
そうですね……病院や他の医療機関で腰痛症が改善することもあれば、改善しないケースもあります。
私が知っているものに、マッケンジー法エクササイズがあります。
内容は割愛しますが、国際マッケンジー協会の認定資格を有する医師や理学療法士が医療機関で実際にマッケンジー法の治療にあたり成果を得ているようです。
一般向けに書かれた書物には自分でどうやって腰痛症を治し、予防するかについて分かりやすく書かれています。
腰痛症を知り、セルフケアを用いて改善させましょう!
皆さん、最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
今回は具体的な治療法や施術には触れず、腰痛症そのものにスポットを当て私なりの解釈でご説明してきました。世間の解釈と違う点もあろうかと思いますが、ご容赦ください。
整骨院で、施術可能な症状には対応致します。
ご不明な点やご質問などあればLINE@やメールでお問い合わせ頂ければ幸いです。
■参考文献
腰痛診療ガイドライン2019(南江堂)、伊藤かよこ「人生を変える幸せの腰痛学校」(プレジデント社)、ロビン・マッケンジー「自分で治せる!腰痛改善マニュアル」(実業之日本社)
けんしょう野洲駅前鍼灸整骨・整体院
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