サッカー中の股関節の痛み|グロインペイン症候群とは?
こんにちは。joyplus.桜宮の溝端です。
サッカーをされている方やサッカーファンの方であれば、グロインペイン症候群(鼠径部通症候群)というケガの名前を一度は耳にしたと思います。
主にサッカー選手に発症するもので、脚の付け根に生じる痛みの原因となるスポーツ障害です。
日本のサッカー選手だけでも、グロインペイン症候群に悩まされる選手は多く、それを理由にパフォーマンスの低下から引退の危機に直面することもあります。
そこで今回は、「グロインペイン症候群」の原因や治療方法についてご紹介します。
目次
サッカー選手に多いグロインペイン症候群とは
グロインペイン症候群とは、「鼠径部痛症候群」とも呼ばれ、股関節や鼠径部の痛みを主症状とする疾患の総称です。
症状としては、ランニングやダッシュ、キックなどの際に股関節や鼠径部に痛みが生じ、重症化するとスポーツを続けることが困難になります。
原因がはっきりせず、似たような症状がある場合に「症候群」と呼ばれます。そのため、グロインペイン症候群の原因は特定できない場合がほとんどです。
病院で診察を受けても、画像検査や血液検査から明確な病態を特定することは困難です。
グロインペイン症候群は、主にサッカーをしている10代から30代の方に起こりやすい疾患です。
過去には、中田英寿選手、中山雅史選手、中村俊輔選手など、多くのサッカー選手がこの症状に悩まされました。
恥骨に大きな負荷がかかることで、脚の付け根に痛みが生じるのが原因です。
特にサッカー選手の職業病といっても過言ではない。
グロインペイン症候群の症状とは
ランニング時や起き上がる動作、ボールを蹴る動作を行う際に腹部に力を入れたときに鼠径部や周辺に痛みが走ります。
初期症状では、全力疾走、キック動作など、限定的に痛みが生じますが、症状が悪化していくと、痛みの頻度が増え、軽い運動でも痛みがでるようになります。
グロインペイン症候群は、圧痛、運動痛、時に鼠径部や大腿内側(内転筋付着部)、下腹部にまで放散する疼痛が特有です。
慢性化すると鼠径部が常に痛みます。
特に下肢を伸展して挙上、外転する動作で誘発されやすく、股関節の可動域制限、筋力低下が見られます。
では、このグロインペイン症候群は何が原因で生じるのでしょうか。
グロインペイン症候群の原因とは
グロインペイン症候群の原因としては、大きく3つが挙げられます。身体の中でどのようなことが起きているか、それぞれ見ていきましょう。
股関節周囲の筋の柔軟性や関節の可動域の低下
下肢の外傷後や体幹から股関節にかけてスポーツによる使い過ぎなどによって筋力低下や柔軟性低下、
拘縮が起こり、それが鼠径部周辺の痛みとなると思われています。
キック動作やランニングやなどの繰り返しの運動によって、鼠径部、股関節周辺、骨盤にメカニカルなストレスが加わって炎症が生じ、痛みとなります。
タックルなどで直接股関節周辺に打撲を受けた場合でも発生します。
骨盤の安定性の低下
柔軟性や可動性の低下によって骨盤を支える筋力(安定性)の低下を招き、不安定になります。
体幹と下肢の動作の協調の低下
グロインペイン症候群の原因は、個人によって様々です。
しかし、予防するためには、背骨と股関節の協調性を高めることが重要です。
例えば、サッカーのキック動作を見てみましょう。右足でボールを蹴るとき、右足を後ろに振り、体を左にひねり、左腕と肩甲骨も後ろに引きます。
ボールを蹴るときは、後ろにひねっていた右足と左腕が近づいていく。
これが「クロスモーション」で、蹴り足と反対側の上半身を後方にひねり、体を屈曲させてパワーを発生させるのです。
このように、上半身と下半身を連動させて柔軟に使えるようにすることが大切です。
しかし、上半身や股関節の柔軟性が十分でなかったり、体幹が不安定だと、協調性が失われ、ボールを蹴るときに股関節に強い力が必要になってしまいます。
そのため、股関節の筋肉を酷使することになり、グロインペイン症候群などの症状を引き起こすのです。
では、このようなグロインペイン症候群の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか?
グロインペイン症候群の治療法とは
グロインペイン症候群の保存療法と手術療法について説明していきます。
保存療法
急性期、あるいは発症から6ヶ月以内の症例では、保存療法を第一選択とする。
これには局所の安静、アイシング、温熱療法、消炎鎮痛剤、ステロイドホルモンの局所注射などがあります。しかし、長期的には運動療法が有効である。
初期のリハビリテーションは、股関節外転可動域訓練、筋力強化、内転筋のストレッチから始まり、
水中歩行や有酸素運動によるアンロードトレーニング、そしてジョギングを行います。
ボールを蹴る運動は2ヶ月以降に行うようにします。痛みが消失した後の不適切な早期復帰は、痛みの再発を招きます。
痛みが慢性化すると、長期(2~3ヶ月以上)のスポーツ中断を余儀なくされる。したがって、注意が必要である。
手術療法
保存的治療に反応せず、痛みが長期間続く場合は、外科的治療が検討されます。
しかし、原因がはっきりしないことが多いため、主病巣の特定と原因への対処を目的に、
薄筋腱膜切除術、骨片切除術、恥骨結合の固定、内転筋の血腫除去、ヘルニア修復など、過去にさまざまな方法がとられてきました。
適応症は国によって様々である。
10年以上前にドイツで手術治療を受け、現在は現場に復帰している中山ゴン(元ジュビロ磐田)の例もある。
最近では保存療法が奏功し、リハビリテーションも積極的に取り入れられている。
グロインペインの予防法
グロインペイン症候群の予防には、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、股関節周辺の筋肉の柔軟性を確保することが重要です。これは、ストレッチなどの運動によって行うことができます。
第二に、体幹と股関節周囲の筋肉を強化することです。これにより、股関節を支え、ケガから守ることができます。
最後に、サッカー選手は、下肢と上肢を連動させたキック動作を身につけることで、スポーツ動作を向上させることができます。
そうすることで、鼠径部の痛みを防ぐことができます。
ストレッチ
鼠径周辺部痛症候群と考えられる選手の特徴としては、股関節周囲筋の柔軟性の低下が挙げられます。
なかでも重要なのは、股関節内転筋群の柔軟性を保つことです。
今回は、股関節周囲の内転筋、伸展筋(大殿筋・ハムストリングス)、屈曲筋(腸腰筋・大腿直筋)、のストレッチングを紹介します。
1. 内転筋ストレッチ
2. 大殿筋ストレッチ
3. ハムストリングスストレッチ
4. 腸腰筋ストレッチ
5. 大腿直筋ストレッチ
トレーニング
グロインペイン症候群を予防するための具体的なエクササイズを紹介していきます。
1. 四つ這いからのクロスモーションエクササイズ
四つ這い姿勢から、左手、右脚を真っ直ぐと伸ばします。
次に、その伸ばした手足の膝と肘をくっつけるように、近づけます。
体がぐらつかないようにこの動作を繰り返します。左右逆にして同じように行います。
2. 立位でのクロスモーションエクササイズ
立った姿勢から、左手を上に挙げ、右脚を後方に引きます。
後ろに引いた反動を使って、実際にキックするように前にスイングを繰り返します。 左右逆にして同じように行います。
グロインペインがないサッカーライフを楽しみましょう!
今回は、グロインペイン症候群の対策・予防法・原因についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
グロインペイン症候群の診断や治療法はまだ確立されていませんが、その予防には上半身と下半身の連携が重要です。
特にサッカー選手に多い症状ですが、動きのクセや体質には個人差があります。
必要に応じて、理学療法士やトレーナーによる身体のチェックを受け、適切な対処を行いましょう。
参考資料
仁賀定雄:『Groin pain syndrome』