腰痛は治し方より付き合い方が大事|その理由をベテラン治療家が解説

こんにちは。皆さんは初詣に行きましたか?私は昨年末に分散参拝を初めて経験しました。

お賽銭を用意し、合掌をして願い事を唱える「願かけ」をしようと、まずは自分の名前と住所を述べてから、一年健康で過ごせたことに対する感謝と報告を終えた後、最後に心を込めて願い事をしました。

おみくじを引くと半吉でした。半分吉で半分凶らしいです。

調べてみますと大吉よりも珍しいそうで、半吉を引くこと自体が運が開けたと都合のいい解釈をしているjoyplus.鍼灸整骨院の“通称きん爺”こと堤です。(筋肉をこよなく愛する中年セラピストで、きん爺と呼ばれています。)


本日のテーマは腰痛症シリーズです。「もしも、腰痛になったらどうしよう・・・」ではなく

「腰痛にならないために、いつも予防しよう!」という情報を皆さんにお届けできたらと考えております。

このブログを最後まで読んでいただくことで「腰痛だから、お出かけできない。好きな運動やスポーツができない。」

ではなく「腰痛症があってもお出かけしたり、好きなことが出来る!」と思考が変わるようなお手伝いができると思います。

まずは医療機関を受診し検査をして原因を究明しよう

厚生労働省国民生活基礎調査の有訴受診率では、腰痛症は男女あわせて1位であり、整形外科外来患者の60%にものぼるとされています。
有病率は男性25,2%、女性30,5%であり実に日本国民の1,800万人以上が罹患していることになります。
また、45歳以下の就業不能原因の1位とされ、重大な社会問題にもなっています。

腰痛は“腰が痛い”という総称であり、腰痛という病態が存在するわけではなく、

椎間板性・椎間関節性・仙腸関節性・筋・筋膜性などの構築学的支持機構の破綻はもちろん心理・社会的問題も含めて原因は多岐に渡ります。


でも、次のようなことも言われています。


① 非特異的腰痛(原因不明)は85%とされているが、病態別に分類すれば78%は特定できる可能性がある。


■ 筋・筋膜性腰痛…17.5%
■ 椎間関節性腰痛…21.3%
■ 椎間板性腰痛…12.5%
■ 仙腸関節痛…5.6%
■ 椎体圧迫骨折…3.1%
■ 椎間板ヘルニア…6.9%
■ 脊柱管狭窄症…10.9%
■ その他(感染症、心因性)…0.6%
※ すべてがこのデータ通りになるほど、腰痛が単純ではないそうですが、知見の一つとして知っておきましょう。


これらのことを考えると、まずは医療機関でX線画像や(必要であればMRI…磁気共鳴画像)医師の診断、治療方針を正しく理解することが大切なんだと思います。

まずはカラダのことを知ろう(骨格・関節・筋肉って?)


私たちが毎日の生活のなかでよく使うもの、そして何よりも大切なものって何でしょうか?

それはそれぞれの価値観があり、多種多様な答えがあっていいのですが、健康第一で考えればそれは私たちの“カラダ”そのものにほかなりません。

腰痛が国民病と呼ばれている今、(腰痛難民とさえ呼ばれる方々もいるようです)皆さんにご提案です。


医療機関で精査し、それでも原因が分からない方も、診断名が分かり落胆している方も今一度、自らのカラダについて少し一緒に学びませんか?


私たち柔道整復師・鍼灸師は医療人となるために、まず「解剖学」で人体の仕組みや構造について学びます。

骨や筋肉などの名前や位置、その働きなどとても複雑ですし、神経や脈管などは覚えても、覚えてもどこか忘却の彼方です。

ここで私自身、もう一度奮起して学び直すことが正直なところです(笑)。

腰そのものを知る前に、まずはカラダ全体を知っていきましょう!ちょっぴり面倒くさいと思った方もいらっしゃるのは承知の上で参ります!


骨格について

■ヒトの骨は大人でおよそ200個の骨があるそうです。ところが、子どもは大人よりも骨の数が多く、生まれたばかりの赤ちゃんは軟骨を含めると300個ほどの骨があります。

大人になると骨の数が減る理由は、カラダが大きくなるにしたがって、骨と骨の隙間がつながったり、いくつかの骨が一つになるため

骨のくっつきかたは人によって異なり、大人になったときの骨の数は206個が標準で個人差があります。


■200個もの骨は複雑に組み合わさり、つながることで骨格を形成しています。骨格はさまざまな大きさやカタチの骨からできていて、軟骨も骨格の一部をつくります。

ちなみにヒトのカラダのなかで一番大きくて強い骨は、太ももの部分にある大腿骨(だいたいこつ)です。

反対に、一番小さな骨は耳の中に3つある耳小骨(じしょうこつ)と呼ばれる骨で、音を聞くため複雑な形状をしています。


■骨には最も大きな役割が二つあります。一つは人間のカラダを支えること。

骨がなければ立つこともできませんし、骨をつなげる関節がなければ、カラダを曲げたり、伸ばしたり動くこともまったくできません。

もう一つの役目は、ヒトのカラダの大事な部分を守ることです。

硬くて頑丈なつくりの頭蓋骨(とうがいこつ)は脳をしっかり守り、肋骨(ろっこつ)は鳥かごのような構造で心臓や肺などの臓器をすっぽり包んでいます。

人体にはいくつ関節があるの?


骨と骨のつなぎ目には関節があり、肩や肘(ひじ)、股や膝、足首、指などヒトのカラダには全部で約260個の関節があります。関節の役割は、カラダが滑らかに動くようにすることです。

歩いたり、しゃがんだり、物をつかむなどの日常の動作は、これらの関節を動かすことで可能になります。

どんなに丈夫な骨や強い筋肉があっても、関節がなければカラダを思い通りに動かすことはできないというわけです。


ヒトは1日に約10万回も関節を動かしており、このように酷使しても耐えられる丈夫な構造をしています。

関節は靭帯や膜で覆われ、膜の内側には関節を滑らかにするはたらきのある滑液で満たされています。

関節に向かう骨の表面には、弾力性のある軟骨があり、滑液や軟骨は骨同士がこすれ合わないよう、関節を守っています。

ヒトの関節には、肩や股関節のように前後、左右、上下の方向に動かすことができる「球(きゅう)関節」と、肘や膝など骨が蝶番(ちょうつがい)のようなカタチをして曲げたり伸ばしたりすることができる「蝶番関節」など、さまざまな形状のものがあります。

親指のつけ根などにある「鞍(あん)関節は、「球関節」ほどではないものの、広く自由に動かせる関節です。

首の部分などにある「車軸(しゃじく)関節」は、首の場合、左右を見回すのに便利なつくりになっています。

横や前後の細かい動きに向いた「楕円(だえん)関節」は手首などにある関節です。

筋肉って全部でいくつあるの?~骨と違い、筋肉を正確に数えるのは難しい~

ヒトのカラダは全部でいくつの筋肉があるのでしょう。


筋肉には骨についている骨格筋(こっかくきん)のほか、心臓を動かす心筋(しんきん)と、血管や内臓などの壁をつくる平滑筋(へいかつきん)の3種類があります。

平滑筋と心筋は数えられません。骨格筋は左右にあり、また細かく分かれているので全部合わせて400個とか800個という研究者もいて、なかなか意見が一致しません。


その理由は、数え方によって筋肉の数が違ってくるためです。

筋肉には1つひとつ名前がついているので、誰が数えても同じになるはずですが、中には例外があり、数え方をややこしくしています。


最も厄介なのは背骨のところにある骨格筋で、一部の筋肉には、1つひとつに名前がついていません。

背骨の横突起(おうとっき)から出てきて、上の棘突起(きょくとっき)に斜めにつく筋肉は、1つ上、2つ上、3つ上…というふうについているものがあり、境目なくつながっています。

これらは、全部まとめて1つの筋肉としたほうがよいか、別の筋肉としたほうがよいか、判断するのは難しいところです。

しかたなく便宜上として、数で分けて、1つ上から2つ上までについている比較的短い筋肉を「回旋筋(かいせんきん)」、2~4つ上までについているのを「多裂筋(たれつきん)」、4つ以上のものを「半棘筋(はんきょくきん)」としています。

ちなみに、手の中の筋肉にも、1つの名前で呼べば、数が少なくなるものがあります。筋肉の数を正確にいうのはとても難しいのです。」

自分自身で腰痛を治すことはできる。~なぜ運動がいいのか~

少しカラダについてお話してきましたが、ここで腰痛に限らずカラダを動かすことがなぜ良いとされているかをご説明いたします。


痛みが強い時は、動きたくないものです。

この反応は生体の防御反応としては、正常の反応ですが慢性痛のように痛みのために動かない時間が長時間続くと、状況は一変します。

一般的に長時間筋肉を動かさないでいると筋力は低下し、廃用性萎縮と呼ばれる状態になります。さらに筋肉を動かさなければ関節拘縮になります。

これらが生じると、動きが制限されるのはもちろんのこと、廃用性萎縮を起こした筋肉や関節拘縮が起こった関節の動きを他の筋肉や部位が代償しようとし、負担をかけることで二次的な痛みが出現します。


このように、筋肉を長時間動かさないことで新たな痛みを引き起こす可能性があることから、筋力を増強させる運動や関節を動かすような運動を指導します。

これらは、筋力トレーニングや関節可動域訓練と呼ばれ、痛みに対するリハビリテーションとしては一般的な方法です。

一方、歩行や体操などの軽度な運動は廃用性萎縮や関節拘縮を予防するだけでなく、その運動自体に鎮痛効果があるのではないかと言われています。そのメカニズムはこうです。


一般的に、軽度の有酸素運動を行うと、脳内から内因性のオピオイド物質が放出されることが知られていることから、痛みがある程度あってもカラダを動かすことはとても大切だと考えられています。

ただし、運動の量・強度は、痛みの強さや疾患の種類により異なり、個人差があるので運動を行うには専門家の指示を受けることが望ましいと思われます。


いずれにせよ、痛みが長期化した場合は、カラダをを動かすことが大切です。


■関節可動域訓練は、萎縮や拘縮だけでなく、痛みの予防にもなる。
■軽度な有酸素運動(歩行、ランニング、エアロビクスなど)は、脳内からオピオイド物質を誘発することで、痛みを抑制する。


※ 内因性のオピオイドとは…脳内麻薬あるいは脳内モルヒネと言われるが、より専門的な言い方が内因性のオピオイドになる。

生体内にあってモルヒネ様の薬理作用をもつ一群のペプチドの総称。

腰痛あるあるその① 
~ほぐすってどうやって?~

腰痛の方がまず好きなことは気持ちの良い、リラックス効果のあるマッサージを受けることです。鍼治療も経験がある方は多いと思います。

昨今、一世を風靡した筋膜リリースもほぐすという範囲だと考えます。私も大好きなストレッチポールも一度リセットする、ニュートラルな状態に戻すという概念では、ほぐすためのギアの一つです。


※ストレッチポールとは・・・こちらの情報をどうぞ !! ストレッチポール公式サイト|ストレッチポールの効果


痛いぐらいの強刺激を好まれる方もいると思いますが、イタキモチいい中程度の刺激がおススメです。
「カラダをほぐしたって、直ぐに戻ってしまうから一緒じゃないか?」と耳にすることがあります。

個人的な意見ですが、私はそうだとは思いません。カラダをほぐすことは心身ともに健康になる第一歩だと考えています。

慢性的な痛みをお持ちの方の特徴の一つは常にカラダが緊張して自律神経の交感神経が優位な状態にいることです。

「リセット・リフレッシュ・リラックス」を心掛けて、まずはカラダが副交感神経優位になるように導いてあげましょう。

腰痛あるあるその②
 ~鍛えるところはどこ?~

鍛えるというと筋力トレーニングなど、ストイックにガンガン負荷をかける、というイメージがあります。

ここでいう鍛えるという意味は、見えるところではなく「キレイな姿勢や動かしやすいカラダづくりを目指す」という重要な観点です。

その前に、姿勢保持に関係する胸腰筋膜のことを少しお伝えします。先ほど、骨格のお話をさせていただきましたが、筋膜についても触れておきたいと思います。

筋膜とは、全身の筋のほか、骨や心臓、脳などの臓器をすべて包んでいる膜のことで、全身をくまなく覆っていることから第2の骨格とも呼ばれています。


筋膜は水溶液状の間質液でできています。この筋膜がよじれたり、癒着したりすると筋膜そのものだけでなく、上にある皮膚や下にある筋肉も動きずらくなります。

そのためキレイな姿勢や動作が取りづらくなり、腰痛や肩こりの一要因となることも分かってきています。


筋膜のなかでも姿勢と密接に関わるのが体幹部に存在する胸腰筋膜です。この筋膜は数層からなり、背部に広範囲にわたる筋膜系で、脊柱起立筋・多裂筋・腰方形筋・腹横筋によって支えられています。

これらの筋群が胸腰筋膜の張力を高め安定化機構に寄与しているのです。

さらに胸腰筋膜は、腰椎の屈曲限界域で緊張し、屈曲を制限するほか、動的な安定化機能も見られます。

(動的安定化機能…姿勢の変化、歩行、外乱などの際に、姿勢を保持するもしくは別の安定した状態になる機能。)

また、広背筋の腱膜と下後鋸筋、内腹斜筋および腹横筋とつながる線維が、胸腰筋膜の外縫線(これらの筋肉が一体化する部分)で一体となり、このためこれらの筋の収縮によって屈曲した筋膜を介して筋膜の張力が高まり、これも腰椎を安定させるチカラになります。

人間のカラダにはコルセットの役割をしているインナーユニットという働きがあります。腹腔を取り囲む、腹横筋・横隔膜・骨盤底筋・多裂筋の4筋があります。


個々の機能のほか、腹腔内圧の維持・上昇を行いますが、腹横筋などが収縮して、腹腔内圧を上昇しようとしても、骨盤底筋が底面で支持しきれなければその機構はうまく働かないのです。

最後に、呼吸の重要性にも言わせてください。実は、呼吸も姿勢や安定性に影響を及ぼします。息を吸うと胸椎が伸展、胸郭が挙上し、脊椎が正しく配列します。

肋間筋も呼吸をしたときに肋骨を安定させて動かす姿勢筋として機能します。呼吸に関わる横隔膜も、腹横筋と共同して安定化機能に寄与しているのです。


外見も見論、大切ですが本来キレイな姿勢を保ったりカラダに“軸”をつくりブレない、安定した動きやすさを導き出すのは見えない筋肉たち、インナーユニットなのです。

腰痛のセルフマネジメントを知ることが腰痛改善のカギ


腰痛で長年苦しんでいる方は実に多いです。

一度、ご自身の腰痛が「健康―未病―病気」という時系列の中で自分の健康の物差しの焦点がどこに向けられているか考えてみてはいかがでしょうか。

特に慢性的な腰痛は痛みとうまく付き合っていくためのセルフマネージメントという視点が必要となります。


腰痛に対する考え方は色々な治療を受けてきた皆さんには、お一人、おひとりが経験した数だけあろうかと思います。

そしてどんなセルフケアをしたらいいのか悩んでいる方もたくさんいらっしゃるはずです。「運動・考え方(認知行動療法)・痛みへの理解」がセルフケアとしてのエビデンスが高いという報告があります。

もしも皆さんが自身のチカラで腰痛を改善したいと考えているのなら、考え方を変えるきっかけになればと、書物を2冊ご紹介いたします。

■自分で治せる! 腰痛改善マニュアル(ロビン・マッケンジー/実業之日本社)
わが国では、1930年代から2000年前後までWilliamsの姿勢体操が主流でした。Mckenzieエクササイズは、脊柱可動性の改善と腰椎椎間板ヘルニアにおいて椎間板内圧軽減に対する効果が認めれており、今日では世界のスタンダードになっています。(ダチョウ俱楽部のリーダーこと肥後克広さんもマッケンジー法の腰痛体験記を書かれています。)
■人生を変える幸せの腰痛学校(伊藤かよこ/プレジデント社)
「ようこそ、世界最先端の腰痛治療 “認知行動療法プログラム”の世界へ―」から始まるこの書物は、腰痛の改善目的で書かれた世界ではじめての小説形式の本です。この本は、認知行動療法に基づく腰痛治療が物語を読み進めながら自然と疑似体験できる、意欲的かつ画期的な一冊だそうです。とても読みやすく、物語の結末が素敵です!

考え方と痛みの関係を理解して、腰痛を予防できることを知ろう!

皆さん、最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました。医療現場では様々な腰痛患者さんが毎日のように来院されます。


例えば、ぎっくり腰を起こしてしまえば、その瞬間は自分では安静にする以外何もできることがありません。

冒頭で述べましたが「もしも、腰痛になったらどうしよう・・・」ではなく、「腰痛にならないために、いつも予防しよう!」という記事を書きたくて今回も執筆させいただきました。腰痛難民と呼ばれる方々に少しでもお役に立てる時が来るとしたならば、治療家としてこんなに嬉しいことはありません。


長文、ご容赦ください。

整骨院で、施術可能な症状には対応致します。
ご不明な点やご質問などあればLINE@やメールでお問い合わせ頂ければ幸いです。

■参考文献
□地震イツモノート(渥美公秀:監修、寄藤文平:絵 ・木楽舎) □眠れなくなるほど面白い図解解剖学の話(坂井建雄:
監修・日本文芸社) □正しく理想的な姿勢を取り戻す姿勢の教科書(竹井 仁・ナツメ社) □よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ〔第2版〕(伊藤和憲・秀和システム)

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